世界一の電子国家「エストニア」を訪問


先日、エストニアに行ってきた。
エストニアはバルト三国の一つで、人口は134万人、首都はバルト海に面したタリンである。旧ソビエト連邦の一つだが、文化的にはフィンランドに近いと言われている。エストニアは今、世界一の電子国家とも言われ、世界から注目を集めている。

エストニアへはフィンランドのヘルシンキ経由で訪問した。
※ エストニアを訪れる前に、スウェーデンとフィンランドを旅してきたのだが、そのことについてはここでは割愛する。

ヘルシンキからタリンまでは大型フェリーで約2時間、料金も数千円程度で、入国審査もなく、気軽に行くことができる。
船の旅はとても快適で、船内にはレストランやカフェ、スーパー、免税店、カジノなど様々な施設が入っていた。
インターネットにも途切れ途切れではあるが接続できた。

タリンは中世の街並みが残る歴史の街でだった。特に1km四方の旧市街はまるでおとぎ話に出てきそうな世界だった。
街を歩いているだけで楽しく、どこを撮っても絵になる街だった。
無料のガイドツアー(英語)もあり、特に予約する必要もなく、集合時間に Tallinn Tourist Information の前に行くだけで参加できた。

タリンは美しい街であるが、別の印象は「笑顔の消えた街」だった。
これは決して大げさな表現ではなく、エストニア人は本当に笑顔を見せないのである。これはエストニア人同士でも同様だった。
たまに笑顔を見かけると決まって観光客だった。
最初はなぜだろうと疑問に思っていたが、エストニアのことを知れば知るほど、もしかしたら歴史がそうさせているのかもしれないと思うようになった。

エストニアは常に列強に支配され続けた国だった。
エストニアが独立したのは1918年とされているが、本当の意味での独立は1991年のソ連崩壊まで待たなければならなかった。
1940年以降のソ連の占領支配は極めて過酷なものだった。
占領直後、政治家や将校など国の指導的立場にある人のほぼ全てに当たる8000人が逮捕され、その内2200人が処刑され、他の大部分はロシアの収容所に移され、ほぼ全員が死亡した[1]。
また約1万人のエストニア市民も、シベリアなどに追放され、その半数近くの人々が命を落とした。
その後も長い間、KGBなどによる市民の監視が続いた。
旧市街には当時使われていたKGBの刑務所が今も残っており、その一部で当時収容された人の供述や、拷問の様子が映し出されていた。
最終的にエストニアの全人口の20%に当たる20万人以上の人々がソ連の支配によって命を落としたと言われている[1]。

今年(2018年)がちょうど独立100周年ということもあり、広場ではプロジェクションマッピングなどが映し出され、お祭り騒ぎだった。

旧市街から一歩外に出ると、近代的な建物が広がっていた。
インターネット通話でなじみの深い Skype もここタリンで生まれた。


近くのシッピングセンターに行くと、TOKUMARUというラーメン屋が入っていた。
とてもおしゃれなお店で、調べてみたらかなりの人気店で、バルト三国に多数出店しているようである。
そして SUSHI BAR も至る所に見かけた。どうもエストニア人にとって、お寿司やラーメンはファッショナブルな食べ物として定着しているようである。

冒頭でも触れたがエストニアは世界一の電子国家と言われている。
国民には国民IDカードが配布され、ほぼすべての行政手続きが、インターネットを通じてできるようになっている。
2015年に日本で開始されたマイナンバー制度も、エストニアの国民ID制度を参考にしていると言われている。
また e-Residency という電子居住権システムが有名で、外国人でも申請することが可能でき、受理されると電子住民になることができる。
自分も8月に e-Residency に申請してみたが、10月現在もまだ審査中である。


e-Residency に登録すると、様々な行政サービスが受けられ、法人設立や銀行口座も全てインターネットで行うことができるようになる。
手続きが簡便で、法人税も(内部留保の時点では)0%であることから、近年ではエストニアを拠点に活動するスタートアップ企業も増えている。
このようにエストニアが先進的な電子国家へと変貌した背景には、ソ連崩壊後、それまで政府や役所の中枢を占めていたロシア人が去っていき、国家のシステム基盤を早急に構築する必要があったこと、またソ連が再度侵略してきた際、政府機関が物理的に占拠されても、インターネットを通じて国家を維持できるようにするという狙いがあったと言われている[2][3]。

エストニアは悲しい歴史を歩んできたが、それを強みに生かそうとしている。
今後もエストニアの動向には注目していきたい。

参考文献

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