Webプログラミングをテーマにした遠隔教育システム


新型コロナウイルスによって全国の学校の休校が長期化する中、オンライン授業の実施に苦労されている学校も多いと思う。以前、Webプログラミングをテーマにした遠隔教育システムの案を作成したことがあり、その内容を簡単に紹介する。非同期式の授業と同期式の授業を組み合わせた形が特徴となっている。

遠隔教育システムといってもその形態は多種様々で、この案も、その一形態に過ぎないが、少しでも何か参考になれば幸いである。

本題とは異なるが、私は20年近く教育・学習支援システムの開発を行っており、その中の一つ「iroha Board」が以下のサイトからダウンロード可能となっている。オープンソースソフトウェアとして無償で提供しており、手軽に独自の eラーニングシステムが構築可能で、既に多くの学校・企業で実際に利用されている。
https://irohaboard.irohasoft.jp/

以下本題

◆ 遠隔教育のテーマ

Webプログラミング(PHP入門)

◆ 対象者

プログラミング初学者
(ただしパソコンやWebアプリケーション、Webサーバについて基本的な知識を持っている人を対象とする。)

◆ スコープ

PHP言語とそれに付随する知識を習得対象とする。プログラミングを行うための環境構築や、特定の開発用製品、フレームワークに依存する知識は対象としない。

◆ コースの標準学習時間

90分x15コマとする。(1週間に1コマ、15週間)

分析

従来の授業では、先生が学習目標を設定し、教室内で教科書を基に講義を行っていた。授業の後半は演習問題を出し、学習者がそれを行い、躓いたところを先生がサポートを行っていた。問題点としては全て同期式授業の為、途中でつまずくと、授業についていけない場合が多かった。理解度も人によってばらばらで、また時間も限られているため、演習が最後まで終わらない人も多かった。

DLSの授業では、学習目標と講義(動画)を事前に用意し、学習者は好きな時間に非同期で学習を行えるようにする。また講義動画の後半で演習問題を出し、まずは自分の力でできるところまで演習問題に取り組む。その後、決められた日時に同期式の授業を行い、非同期式授業での学習内容の簡単な振り返りと、演習の内容の確認を行い、質問内容への回答や、アドバイスなどを行う。

※ DLS:遠隔教育システム(Distance Leanring System)

DLS のユースケース

DLSには学習コンテンツの登録機能、学習機能、チャット機能、プッシュ通知機能、ビデオ会議機能、仮想マシン環境が搭載されている。先生はDLSにログインし、ビデオ、確認テスト、課題などの学習コンテンツをアップロードする。学生はDLSにログインし、学習を行う。わからないことがあった場合、チャット機能について質問を行う。質問があった場合、先生は質問に答える。同期式授業が始まる1日前及び10分前に、DLSから学生に対して、メールにてプッシュ通知を行う。開始時間になったらDLSにログインし、ビデオ会議機能を使用して、同期式授業を開始する。また演習問題を行うためのVM環境があらかじめ用意されており、そこにアクセスことで作成したコードの実行、および先生との成果物の共有ができるようになっている。

学習ユニットの構成

本コースの目的は「小規模なWebアプリケーションを作成すること」である。そのために「ユーザインタフェースのデザイン」「プログラミングコードの記述と実行」「ユーザの入力データの保存」といった学習項目があり、さらに下位の階層には「HTMLの基礎」「PHP言語の基礎」「ファイルシステムの基礎」「データベースの基礎」があり、さらに下位の階層には「構文」「データ型」「記号」「PHPの標準関数」などといった学習項目が存在する。

学習の流れ

依存度の高い順に上記の表に配置した。 大きく「ユーザインタフェースのデザイン」 「プログラミングコードの記述と実行」「ユーザの入力データの保存」の3つのブロックに分かれ、さらにブロック内にて依存度の高い項目を前に持ってきている。例えば「ユーザインタフェースのデザイン」 を学習するには、「HTMLの基礎」の知識が必要となるため、前に配置している。同様に「PHP言語の基礎」を習得するには「構文」「データ型」などの知識が必要となるため前に配置している。

1ユニットが1回分の授業に相当する。但し最後の「小規模なWebアプリケーションの開発」授業のみ2コマを使用する。

教育コンテンツの例

本教育コンテンツは講義動画とPDF形式のテキスト、演習用の課題ファイルより構成されている。講義内容はPHPの基本構文を教えるもので、より詳しい情報がテキストに記載されている。課題ファイルは簡単なサンプルコードと、演習課題を記載したテキストファイルが含まれている。

講義は非同期授業用と、同期授業等の2つに分かれている。非同期授業用では、60分間一斉に講義を行い、演習課題についても説明を行い、学習者は課題を行う。後日、30分間の個別の非同期式の授業を行い、簡単な振り返りの後、VM環境にて演習内容の確認を行う。またチャットにて随時質問が行えるようになっている。

非同期式授業は1週間の内、いつでも受講でき、同期式授業は週の終わりに実施する。

評価方法

評価項目は、出席率、演習課題、最終テストの3つから構成されている。それぞれ10点、50点、40点の配点で、合計100点である。出席率は1回の欠席につき減点2とする。演習課題は量と質(達成度)、両方の観点から評価を行う。最終テストは択一式テスト(20問)でWeb上にて実施する。

最終的な得点に応じてグレードを決定する。単位が与えられるのはD以上である。

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