民間のIoT標準化団体の動向


ここ数年、IoT(Internet of Things)に関する話題を耳にする機会が急激に増えています。Internet of Things という言葉は1999年にイギリスの Kevin Ashton が初めて使用した言葉で、その後、IoT と略され全世界で使用され るようになりました。Kevin Ashton は在庫管理などで広く使用されているRFIDの世界標準を作成した人としても知られています。

では今、なぜこれだけ IoT が注目されているのでしょうか。それはIoTの市場が今後、爆発的に増えると見込まれているからです。2020年までにインターネットに接続される端末は300億個を超え、市場規模は3兆ドル規模になると言われております。現在、この巨大な市場で主導権を握るため、メーカーやIT企業を中心に多くの企業が活発に動いており、またここ数年、IoT標準化団体が続々と設立されています。

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上の図は主要なIoT標準化団体を時系列で並べたものですが、2013年2014年に集中していることがわかります。まず 2013年12月に Qualcomm を中心に Allseen Aliance が設立されました。その後、2014年3月にGEが中心に Industrial Internet Consortium が、2014年7月にはIntelを中心に Open Interconnect Consortium が、Samsungを中心にThraed Group が設立されています。国内でもようやく2015年4月にドコモとソフトバンクを中心に Device Web-API Consortium というIoT標準化団体が設立されました。Google と Apple はIoT 標準化団体に直接は参加していないのですが、独自の動きが見られます。

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これは主要なIoT標準化団体を比較したものです。それぞれ特徴があるのですが、いずれのIoT標準化団体もコアテクノロジーやコアとなる構想を持っており、それらの普及を目的としていることがわかります。
市場領域も対象といるそれぞれ異なります。GEが中心としているIndustrial Internet Consortium は航空、電力、医療、鉄道、エネルギーの5分野に絞られています。
Allseen Aliance は家電業界、Open Interconnect Consortium は情報端末、家庭内機器、Thread Groupは半導体業界、白物家電、産業界となっています。国内のDevice Web-API Consortium はまだ設立されたばかりですが、主に情報端末を対象としているようです。
ここで注目したいのはAllseen Aliance、Open Interconnect Consortium です。Allseen Aliance はこの中で一番設立が早いのですが、Android スマートフォン向けCPUで、事実上標準を獲得している Qualcomm が中心となっています。この Allseen Aliance に対抗する形で設立されたのが、PC向けCPUの王者 Intel が中心となって設立された Open Interconnect Consortium と言われています。
今後、IoTの市場で Qualcomm と Intel との間で、標準化を巡って熾烈な争いを行うことが予想されます。

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この図は各IoT標準化団体の位置づけをまとめたものですが、それぞれ対象領域が微妙に異なっているのがわかります。一番特徴的なのが Industrial Internet Consortium で、どちらかというと重工業を専門としており、日本からもトヨタや富士通、日立、NEC、東芝など多くの企業が参加しています。つい先日、日本支部もできました。

Qualcomm が中心となっている Allseen Alliance にはパナソニックやソニー、シャープなどの家電メーカーが参加しております。Thraed Group は Google の買収した Nest と会社が含まれ、Google も間接的に参加しています。また Open Interconnect Consortium と Allseen Alliance 対立関係になると見られています。興味深いことに、どちらともコアとなるテクノロジーはLinux Foundation が深く関与しているという点です。どちらも Linux Foundation 協業関係にあります。できるだけ技術をオープンにして開発者を取り込みたいという意図があると思われます。国内の Device Web-API Consortium ですが、まだ設立されたばかりなのですが、今のところ大きな動きは見られません。

各団体に共通しているのは、コアとなるテクノロジーがあり、その標準化、普及を目指しているという点です。

また Quanlcomm、Intel、Google(Nest)、Appleなど業界に影響力のあるメガベンダーの存在が大きいということも特徴かと思います。Apple は現在どの標準化団体には属していないのですが、IoTと親和性の高い iOS の開発者を多く抱えており、2014年に HomeKit を発表するなど IoT 市場を狙っていることは明らかです。

IoTの標準化団体はかつてのベータマックスとVHSとの戦いのような様相を呈しつつあります。対立軸がいくつもあり少しわかりづらいと思いますが、これから製品化に向かって行くと多くの企業を巻き込んで標準化団体同士で熾烈な主導権争いが起こると思われます。ただ全てがそういうわけではなく、GE のIndustrial Internet Consortium のようにある程度業界ごとに棲み分けができている団体もあります。

日本のメーカーも続々と標準化団体へ参加しており、最近では Device Web-API Consortium など国内でも独自の標準化団体の設立の動きが見られます。今後、あらゆる業界を巻き込んで IoT 標準化の動きはますます活発になっていくかと思います。

また IoT はセキュリティの捉え方が大きく変わると言われています。今まではセキュリティというと情報が漏洩したり、金銭が奪われたり、どちらかというと信用や経済的な損失だったのが、モノとなると生命に危険が及ぶ可能性があります。セキュリティ上のリスクがこれまでと比較にならないほど大きく、IoT市場を円滑に拡大させる上でセキュリティの担保が最大の課題となっています。

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